ぞ 鴻鵠

2008年7月14日





年前の事だろうか。


その日 滅多に見る事、つける事すら無かったTVに向かったのはその数分後に起こる事件、

それに対する予知的な何かを感じ取っての事だったのかもしれない。


見るでもなくつけたTVの画面にはKinkiKidsの二人が映っていた。

正月だったか、クリスマスだったか、とにかくそれら記念日の特別番組で生放送だった。

「はい! えー、今、SMAPの皆さんと電話がつながっていまーす!」

KinkiKidsが言う。


この時、番組に出演中のKinkiKidsとは異なりSMAPの面々は仕事終わりの打ち上げの最中だったのか、

この番組とは無関係にどこか別の場所で酒を呑んでいたようだ。


電話を手にしたKinkiKidsが言う。

「もしもし? おめでとうございまーす!」

音声のみの中継。

次の瞬間である。

受話器の向こうで上を下への乱痴気騒ぎであったSMAPのメンバー、

その内の一人が―――それが誰の発言だったのか音声のみでは窺い知れなかったが――

電話越しに言い放った言葉は耳を疑うものであった。



































「ま○こー!」



































事実―――

受話器の向こうで溺酔状態にあったメンバーはいとも楽しげにこう言い放ったのだ。

その時の発音のニュアンスをネット流に分かり易く伝えるならば、言葉の後ろに顔文字が付いて

「ま○こー(^▽^)/」 といったノリである。


酒の力が垣間見せた意外すぎるSMAPのその一面に、KinkiKidsが、会場が、そして家族の食卓が凍りついた。


「これ、そうとうお酒入ってますね(笑)」

「あらら(笑)」

引き攣る二人の笑顔。

僕は忘れられない。


なんという失態であろうか。

こともあろうか生放送の番組中に「ま○こー(^▽^)/」である。

(^▽^)/ このノリはまずいだろう (^▽^)/ このノリは。

僕はSMAPの失態に酷く驚いた。


しかし、である。

今にして思えば、これをただの失態として片付けた当時の僕はいささか早計だったのではなかろうか?

仮にも彼らは全国5000万の女性ファンを魅了するSMAPである。ジャニーズである。

その彼らが何の考えもなしに、「ま○こー(^▽^)/」などと言うであろうか?


否、そんな筈は無い。

僕はこう考えた。

電話越しに囁く 「ま○こー(^▽^)/」 には何か僕らの窺い知れない、女性を魅了する不思議な力が

秘められているのではないだろうか? と。


ジャニーズ事務所が長年に渡り研鑽を積んできた女性の心を掴むその術は深奥であり、

我ら素人の思慮の及ぶものではない。

そう。

SMAPはSMAPたるべくしてSMAPであり、「ま○こー(^▽^)/」をただの失態と見做している内は

乙女心の深意を悟り、その帙を紐解く事は到底不可能なのである。


模倣する事はいささか趣に欠けるが恥ずべき事ではない。

だからもし貴方の心に想う女性があるならば電話越しに告げてみるのも良いだろう。

さぁ勇気を出して。



「ま○こー(^▽^)/」



意中の女性が貴方に振り向く、そんな日も近いかもしれない。